学生さん
 国公立大学だともっと枚数が多いのかもしれないが、どっちにしても担当教官はそういったものを真面目に読まない。


 単に冒頭の数枚読んで、点数や可か不可かを付けたりすることがあるのをあたしは知っていた。


 おそらく河西教授も多忙だから、ゼミに所属している研究生全員の論文を読むのは物理的に難しいのだろう。


 時間がないし、名物教授らしく、常にメディアなどにも登場していたりする。


 そんな教官が、学部の卒論などをまともに読むとは到底考えにくい。


 だけど、あたしは元々優等生で通っていたので、研究には手を抜くつもりはなかった。


 返って河西教授を追い抜いてやろうとぐらい思っている。


 何せあたし自身、研究熱心だったから、朝早くから夕方の研究室が閉まる頃までずっとカサ研に詰め、研究し続けていた。


 季節も春から初夏になりつつある。


 気候がいいので、大学からの帰りはノートパソコンなどが入ったバッグを持ち、夜道を歩く。

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