学生さん
 今の季節が一番よかった。


 院生になって、初心を忘れていないのもあるし、あたしはなるだけ学校に来ていた。


 もちろん休みの日はほとんど謙太と会っていたが……。


 彼は文芸系のサークルに在籍し、院の授業の合間を縫って、自作のコントや短編小説の原稿などを書いているようだ。


 あたしは意外に思った。


「謙太にはそんな才能があるんだ」と。


 つまり彼は現時点で大学院に仮在籍していて、そっちの方で目が出始めたら、院を辞めるかもしれない。


 大学院中退の作家なども結構多いのだし……。


 それに個々人には適正がある。


 あたしはまかり間違っても、モノを書くなどという芸当はとても出来ないし、謙太は早くからそっちの方を目指しているようだ。


 確かに大学に残って研究を続けていくのは大変なことである。

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