学生さん
第8章
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 四月も終わりに近く、大学もゴールデンウイーク前で連休に入る頃、あたしはずっと朝から夕方までカサ研に詰めて研究していた。


 英語も慣れてしまえば抵抗はない。


 あたし自身、コミュニケーションに使える実践的な英語を勉強したいと思って院まで進んだので、別に後悔はしていなかった。


 と言うよりも、あたしは自分が会社員などになって、滅私奉公(めっしほうこう)するのが逆に苦手だ。


 企業などで働くよりも、将来的には研究者になって、大学に残るのが一番だと思えた。


 それまでには一定の研究業績を作らないといけない。


 研究者にとって一番認めてもらいやすいのは研究論文を書くことである。


 それが出来れば、逸早く上の人間たちから認められて、上へと行ける可能性が高い。


 あたし自身、そういったことは痛感していた。


 もちろん論文を書くには資料を集めないといけない。


 論文の枚数が多くなるに連れて、掻き集める資料も増える。

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