学生さん
 だけど研究したいのは誰もが一緒なのだし、あたしは河西教授についているが、今から方向転換することは出来なかった。


 確かに謙太のように院に籍だけ置き、ミステリー作家を目指すような人間も開告大にはたくさんいる。


 でも、あたしは今がベストなときだと思っていた。


 院にいて、修士の二年が終われば博士まで行けるし、博士課程を無事終了すれば、河西教授や浩太、美智香など先輩研究者たちと一緒に研究に専念できる。


 あたしにはまだ読まないといけない論文などが多数あった。


 もちろん各大学で開かれるセミナーや学会などにも参加して、知識を得ることも考えていたのだし……。


 はっきり言っておくが、あたしはそこらにごまんといる、目的意識のないジャリのような学生とはまるで違うのだ。


 いくらモラトリアムでも、研究者になるために与えられたそれを有意義に過ごしている。


 将来的な目標に関してもかなりしっかりしていた。 


 それに同じ大学の院にいて、先輩で恋人の謙太は早々と自分のやりたいことを決めている。
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