学生さん
第10章
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 大型連休中は冬場や初春の寒さがなくなり、むしろ暑いぐらいだった。


 カサ研が閉まっているので、自宅でフラッシュメモリに取り込んでいたデータを開き、所々読み返してみる。


 そして河西教授から任された研究論文の代筆に専念した。


 実は河西は論文を書く暇が全くない。


 テレビなどに出ているので、時間が取れないのだ。


 かといって、大学教授である以上、講義と論文の執筆だけはしないといけない。


 その論文の執筆を河西教授は院生のあたしや助手の浩太、美智香に任せたのだった。


 あたし自身、別に構わないと思ってお引き受けする。


 専門がアメリカ文学の河西は、研究論文を随時その手の学会の機関紙などに載せていた。


 まあ、発行部数が五百部などで、とても少ないのだが……。


 だけど論文は論文である。


 河西も自分の下にいる人間たちに、方向性やコンセプトなどを伝えて、後は丸投げする
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