学生さん
 あたしは元通り服を直して、部屋の出入り口に向け歩こうとしたとき、謙太がテーブルの上に残していた部屋の合鍵と、メモ用紙を見る。


 そこにはケータイの番号と、おそらくパソコンのそれと思われるメールアドレスが走り書きしてあり、<これからもよろしくね>と添え書きしてあった。


 あたしはキーとその用紙を財布の札入れに挟み込み、部屋を出て、鍵を掛ける。


 この部屋は古いアパートで、オートロックじゃない。


 ちゃんと鍵を掛けておかないと、泥棒が入る可能性だって考えられた。


 こうしてあたしと謙太は付き合い始めたのだ。


 学科内では先輩後輩という間柄で通っていたにしても……。
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