学生さん
 あたしは彼からメールが来たときは、ちゃんと返信するつもりでいる。


 部屋が近いが、どうやら謙太はしっかりとやっているらしい。


 あたしもそんなことを思えば安心していた。


 彼は大学を卒業してから二年が経った、二十四歳というまだ人間の可能性が試せる年齢ですでに将来を考えていたのだ。


 ある意味言えば、しっかりしていると思う。


 確かに作家は普通に食べていけない職業だし、風変わりな人も多いのだから……。


 そういった世界で生きていくには、いろんな勉強が必要だろう。


 特に謙太は事件モノを書こうとしている。


 雑学的なものまで知ってないと、面白いミステリーは書けない。


 話を書くからには、その手のことを相当勉強するつもりでいるのはあたしでも分かっていた。


 連休明けに授業が始まっても、謙太は一回も授業に出てこない。


 あたしは一度彼の部屋に行ってみるつもりでいた。
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