学生さん
 むしろ彼はアカデミーの世界よりも在野で活躍したいと願っているのだろう。


 性格から言っても、束縛(そくばく)されるのが嫌いなのは分かっていた。


 あたしはそんな想いを謙太に投影させ、彼が執筆に夢中になっている現実が把握できている。


 目の前でコーヒーを飲みながらチャーハンを突く姿は、食事を抜いてまで原稿に取り組む熱心な姿を髣髴(ほうふつ)とさせた。


 あたしはコーヒーを飲み終わると、立ち上がり、


「食べ終わった皿、置いてていいわよ」


 と言う。


「ああ、ごめんな。勝手なことばかりしちゃってね」


「構わないわ。あたしもたまには謙太の普段の生活の様子見たいし」


 あたしは何も載ってない皿を取ると、フライパンと一緒にキッチンの流しで洗って、片付けを済ませた。


 ゆっくりと時間が流れていく。
 
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