学生さん
 ほとんどがデータベース化されている。


 つまり付いている検索エンジンで検索を掛ければ、必要な情報をいつでも簡単に手に入れられるのだ。


 あたし自身、大学時代から卒論で書いたヘミングウェイ関連の資料はデータベースを自分のパソコンに取り込んでいて、いつでも見られるようにしていた。


 今時、文豪の作品を一冊一冊読んでチェックする人間などほとんどいない。


 だからあたしはパソコンを使って要領よく論文を書き、提出して学士号を受け取った。


 河西教授は昔の人間だから、自身で論文を執筆する際、ワープロ代わりにパソコンを使う。


 単にそれだけだった。


 確かに年も六十代後半でもうすぐ定年を迎える研究者はネットなどを使いこなせない人間が多い。


 その代わり、河西の頭の中にはそれまで漁ってきた文献がほとんど丸ごと入っている。


 そこはあたしも他の院生たちも適(かな)わないのだし、講義を受けるたびに、古い方の英米文学の知識が入ってきていた。

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