学生さん
 そんな教授の講義を露骨に嫌う人間ももちろんいる。


 紛れもなく謙太だった。


 確かに彼は院の修士の二年だが、新年度からほとんど授業に来ていない。


 あたしとは連絡を取り合っているものの、おそらく中退覚悟なのだろう。


 公募の締め切りはまだ先だが、謙太はある地点まで行けば、即院を辞める覚悟があるものと思われた。


 多分、そう先じゃないだろうと考えられる。


 近いうちに大学側と決着を付けるだろう。


 無駄に授業料を払うわけにはいかないというのが、彼の胸の内だろうし……。


 それにけりを付けるには早い方がいいのだから……。


 あたしは感じていた。


 謙太がいずれは院を中退し、本格的に作家を目指すことを。


 彼はまだ若い。

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