学生さん
第16章
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 梅雨入り寸前で、蒸し蒸しした暑さが続く。


 あたしは謙太のブログをブックマークしていて、毎日見ている。


 <ミステリー作家デビューを目指す男の日記>というちょっと長いタイトルが気になっていたが、あたし自身、彼が書いた記事を読み続けていた。


 六月初旬、河西教授が院の授業に来て、


「大岩君は勇気があるね。まるで博打(ばくち)みたいなことするなあ。修士中退して物書き目指すなんて」


 と言う。


 河西は専門には詳しいのだが、そこから一歩出ると常識はまるでない。


 おそらく謙太の意気込みも、まるで分からないのだろう。


 あたしは、彼がミステリー系の文芸賞公募に賭けていることが凄いと思っていた。


 今はいろんな文芸賞や文学賞があるし、ネット作家などで作品が注目されてデビューする人間もいれば、ケータイ小説のサイトから華々しく出てくる作家もいる。


 要は同じ作家を目指すと言ってもいろんな形態があるのだ。
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