学生さん
 謙太は一番オーソドックスな文芸賞公募を目指しているものと思われた。


 締め切りもあるし、倍率はとても高い。


 だけど一度獲れば、その後書く受賞後第一作、第二作で作家としての価値や値打ちが決まる。


 あたしは彼がそれだけ意欲的であることを知った。


 そして謙太は今年七月末に締め切りの日本ミステリー文学大賞の公募原稿を書き綴っているようだ。


 二百五十枚以上五百枚以下と枚数が限られていて。


 彼は確かに大学の卒論は相当な枚数書いたようだった。


 一応開告大文学部の卒論は四百字詰原稿用紙換算で七十五枚以上だ。


 確か、手元に残っている歴代の卒業生の卒論の目録を見てみると、謙太は三百七十枚書いている。


 つまり文章を書くことに対して、全く抵抗がないということだ。


 抵抗がないどころか、逆に慣れてしまっているようだった。

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