学生さん
 あたしは彼が作家を目指す気持ちが、徐々に分かり掛けている。


 おそらく大方、文章を書く方が、研究していく方よりも楽だと感じているからだろう。


 人間は若いうちに特技を身に付けておくと、後々得する。


 あたしは今の謙太の生き生きとした様子をブログの文面を通じてみるたびに、感じてしまう。


 もう青春というような年齢じゃないのだが、彼はとても自分らしく、はつらつと生きているようだった。


 それから三週間ほどが経ち、六月の下旬の蒸し暑い日の朝に、謙太からケータイに連絡が入る。


「今日海見に行かない?」と。


 確かに街から北に自転車で二十分ほど走ったところに海がある。


 広々としていて快適だ。


 夏といえばやはり海を見るのが一番いい。


 あたしは彼と一緒に海を見に行くのは初めてのことになる。
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