学生さん
第17章
     17
 海に着き、あたしたちは駐輪場に自転車を停めると、ビーチへ歩き出す。


 そして広い海を見つめながら、砂浜の一角に座り込んだ。


 ザーという波の音が繰り返し聞こえてきて、絶えず押し寄せてくる。


 あたしが、


「謙太、疲れてない?」


 と訊くと、彼が、


「ああ、まあな。原稿書くのもしんどいしね。でも、慣れたらそうでもないよ。それに作家目指す人間は誰でも原稿書くのに全く躊躇(ためら)いがないからね。むしろ進んで書くんじゃないかな?」


「あたしもそう思う。仮にプロになったら、原稿の依頼はいくらでも入ってくるだろうし」


「俺はそれ目指したいんだ。毎日、作品を書ける人間になれることを、ね」


「でも相当大変よ。あたしも想像がつかない。作家の私生活とか」


「まあ、ずっと原稿に向かってるだろうな。日長一日」
< 98 / 200 >

この作品をシェア

pagetop