magnet


途中にあったコンビニで傘を買ったのはいいけど、濡れていてなんとも気持ち悪い。オマケに濡れて体温が下がっている。


きっと同じ目に合った朔も同じ。


案の定、隣の奴は小さなくしゃみをする。


「……これいいよ。返す」


「いりません」


と何故か即答。


「いらないって私の物じゃないのに」


「でも、先輩が着てくれないと意味ないです。濡れていても多少は温かいですよね?」


「……」


ありがとう。と小さな声で伝えるも傘が雨を弾く音と地面に雨がぶつかる音で掻き消される。


私には少しだけ大きい手がでない上着を見つめる。


心が温かくなっていく気がした。




< 115 / 215 >

この作品をシェア

pagetop