magnet


「説明を……お願いします……」


俯きながら事態の説明を求めてくる。


これでは私が意地悪をしているみたいじゃないか。これっぽっちもそのつもりはないと言うのに。


「――どこまで覚えてる?」


「えー……っと。インターホンが鳴って鍵を開けて、先輩がいて……」


そこで口を止める。なるほどそこまでか。大半は抜けてる。


仕方ないと説明を簡略的に行う。


「――来たはいいけど、いても邪魔になるだろうし帰ろうとしたら、朔にベッドの中に引きずり込まれて今に至るわけ。分かった?」


「……な、何か言いましたか?俺」


「さぁ?」


と言えば朔は項垂れ始めた。


別に怒っているわけではない。少しくらい困ればいいとは思ってる。



< 124 / 215 >

この作品をシェア

pagetop