magnet


「っ――」


走るのは嫌いだ。


でも今は嫌いだと思える余裕もないくらい走って、飛び込むように愛架の家に入った。


「心菜!?ビックリしたーどうしたの?勝手に上がってもいいとは言ってたけど勝手に上がって来たの初めてじゃない?」


「……はっ……はぁ……っ何でもない……何でも」


肩で息をして何でもない事はないのは愛架だって分かるはず、それでも何も言わず「飲み物持ってくるね」と笑って部屋から出ていった。


「……」


何で私愛架の家に来たのだろう。考えても答えは無くて、きっとそれは無意識の内の行動だ。


いつもの定位置に座らせてもらい静かに携帯の電源を切った。


何を恐れているのか分からない。


それでも予感する。


あの人と朔の知り合いや友達ではない関係を。




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