magnet
「心菜。オレンジジュースでいいよね?」
「うん」
「心菜来るなら何か遊びを考えれば良かったなー」
オレンジジュースが入ったコップを握りしめながら愛架の言葉に耳を傾けていた。
何ら変わりない会話。その中に「いつでも話して」とメッセージを聞いた気がした。
それだけで落ち着く。
私は何も愛架に話さない。私の問題だから。私が弱いだけだから。
あの時朔にぶつかれた勇気は今はない。
それほどまで私は……朔が……
一気に流し込んだオレンジジュースは喉に絡み付いて焦がしていった。