magnet
「心菜と登校なんて滅多にないから新鮮だねー」
「そうだね。起こすの大変だったよね」
「ごめんごめん。つい」
「つい。じゃないよ。よくあれで遅刻しないよね」
「実はいつもお母さんに叩き起こされてるんだよ」
「……そっか」
思い出して怖くなった。私が必死で起こしていると愛架のお母さんが来て、スパーンッとスリッパで叩いていったのだ。
そうか。いつもだったのか。平日に泊まらせてもらったことないから寝起きが悪いのも知らなかったし。私起こす必要なかったんだな。うん。
だが、そんな思考も止まる。視線も止まる。
「先輩」
「……」
束の間の安らぎはもう終わり。
聞き慣れた声、ただ怒気を含んでる気がするのは私の気のせいだ。
反射的に一歩下がった。