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仁は私の質問に分かりずらく頬を緩ませた。
「言ったね。初めて会った時」
「――そうか。初めて会った時か」
言われて曖昧に出てくるのは私の席の前に仁が立って仁の横に愛架が立っている風景。
そう言えば、愛架に紹介されて仁と話すようになったんだっけ?
そう言われてなんて答えたんだろう。
今となってはほんの少し前の筈のあの頃の感情ですら埋まってしまって覚えてない。
「今の心菜初めて会った時と同じ目してる」
「――そんな事ないよ。ただの思い過ごしだよ」
一言言ってから教室へと再び足を動かした。
仁が私の言葉に対してどう思ったか分からない。
表情はその人の心を映す。だから顔を見れなかった。見られたくも無かった。