magnet


微かなわだかまりはあるけれど、それは私の中だけで朔にはない。


大丈夫。まだ側にいれる。側にいた。


「ここちゃん先輩」


笑ってくれるから安心できる。


何も、そう。何もなかったことに感じなかった事にしよう。それが楽だ。


そうするのは得意だ。


「朔も飲み物買いに来たの?」


「そんな所です」


「そう」


答えを聞いた後にボタンを押す。独特の機械音と共に飲み物が落ちる音がした。


落ちてきたものを手に取ると冷たかった。


……当たり前か。






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