magnet
とりあえず、この場に留まる。すると、不意に投げかけられる質問。
「オレンジ好きなんですか?」
「何で」
隣に立つ朔を見れば何にするか悩んでるようにこちらを見ずにジッと自販機を見つめていた。
「資料室に閉じ込められた後に飲んでたのも、オレンジだったなと」
「よく覚えてるね」
「はい。オレンジジュースなんて意外と……」
「意外と?」
「子供っぽいところあるんだなって思ったような思わなかったような」
「何それ」
まだ決めかねているのか自販機のボタンを押さない。それは待っているように弱々しく光を放っていた。