magnet


頷くより前にまるでもう決定事項かのように歩き始める。


私も一歩踏み出そうとして足を止めた。いや、止められた。


「行かなくてもいいですよ」


静かに告げられた言葉に秘密がある気がしてならなかった。疑ってばかりで嫌になってくる。


けれど、本人から聞けない事を聞くには彼女に聞くしかない。それに、嫌な気持ちを無視できるほど出来た人間じゃない。


そんな言い訳。でも本当は……どうなのだろうか。


今は分からない。何も分からない。


「朔。また明日。私あの人と話するから。だからまた、明日――」


最後の言葉は顔も見ずに言って学校から出た。


キョロッと辺りを見渡すと何メートルか先にあの人が待っていた。





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