magnet
――
「目、赤くなってますね」
「なってない」
なんて分かりやすい嘘をつきながら保健室から勝手に拝借したタオルを使って冷やす。
目が熱いから気持ちがいい。
「先輩って案外涙脆いですよね」
「……そんなわけない」
「映画とかで泣きやすいタイプだったり」
ギクリと顔がひきつるのは思い当たる節がないわけでもないからだ。
いやでもそんな事分かる筈もない。
「まさか」
「俺、先輩の泣き顔見るの初めてじゃなかったりします」
「は?」
言葉の意図が分からなくて困惑していると朔はこう言った。
「――出会った頃の話から遡ってみませんか?」
きっとそうやって思い出も想いも全部言葉にして互いを知っていく。
そんな関係が一番合っているのだろう。
【END】