magnet
「ちゃんと捕まってて下さい?落っこちるとか嫌ですよ?」
「ん」
短く返事をして、朔のお腹の辺りに手を回す。
まさか自分がこんなことになろうとは。
「先輩」
「何」
「怪我とかしないでください」
「……面倒掛けてごめん」
情けない。こんな事言われるなんて本当に情けない。
足がズキズキするのを感じながら謝れば返ってきたのは意外な言葉だった。
「面倒は掛けてくれていいんですけど、何て言うか……心配だったり……」
最後の方は、ゴニョゴニョとして聞き取りづらかったけれど、確かにそう聞こえた。
それに返事もせず、私はただ回した腕をほんの少し強くし、ほんの少し頭を背中に預けたのだった。
【番外編1.END】