大江戸恋愛記
おばあさんが指を差した方へと顔を向けると、視界に入ったモノに私は絶句した。
「な……何あれ」
僅かに距離があるところからでも分かるほどの巨大。何より背が大きい。
見た目は……
「ガ、ガチムチゾンビ……」
「違う、死妖だ」
私の呟きにそう返しておばあさんはそのガチムチゾンビならぬ死妖とやらのところへ向かっていく。
「ちょ、ちょっと待って!何しに行くんですか!?」
「あれくらいならわしが倒す」
「何言ってるんですか!あんなごっつごつの無理ですよ!」
「わしを侮るな。これでも昔は退治屋だ」
フッ、と小さく笑ってからおばあさんは再び前を向いた。
「紫苑、と言ったかな。お前さんはここに居ろ。ここには結界が張ってあるからな、迂闊に入っては来れるまい」
と、そう残しておばあさんはずんずん向かっていってしまった。
おばあさん…格好いい。
「って感心してる場合じゃなかった!」
ハッとしておばあさんが行った方へ走って行くと、既に怪物のところへと着いていた。
ちょっと待って。いくらなんでもヤバすぎる。
5mは楽に越してるよあの怪物…!
おばあさんはと言うと…普通に丸腰!ああもう駄目だ、食べられちゃう…!
力の差を感じて不謹慎にもそう思って、私は強く目を瞑った。