大江戸恋愛記
そして説明しました
どれくらいが経っただろう。
私はただ目を見開くばかりだった。
今、未来、と言った。この人。未来だって。
「……どうして、そう思ったの…?」
やっとの思いで声を出した。その声が弱々しくて掠れていたことに、私は自分がすごく動揺しているんだと知らされた。
梅ばぁちゃんはじっと私を見つめた。その瞳は何かを知っているような、悟っているような感じがした。
「…おぬしの言動に、どうもそう思わせる節々がある。存在しない国から来たという、西暦を知らない、変な衣を纏っている」
「……」
「わしは、おぬしがこの時代の者じゃない…と、そう思った」
何て返そうかと、思った。
実は未来から来ました、なんて言って信じられるわけがない。
私自体がまだ信じきれてないもの。
どうしよう。
「……あ、の」
どうしよう。
何て答えたらいいの?
「私……っ」
「紫苑」
俯いて言葉を濁らせている私の手が、温かい手のひらに包まれた。
…梅ばぁちゃんの手だった。
「焦らんでも良い。ゆっくりでいいから、話してみよ」
優しく微笑まれて、私は胸の詰まりが少し取れた気がした。
ああ、…この人はきっと、私を否定しない。
私は自然と、口が開いていた。