大江戸恋愛記
回想、そして現状
私、鮎川紫苑(あゆかわしおん)はさっきまで家の倉庫にいたはずだった。
家、と言っても私の家は代々伝わる有名な神社。年季は入ってるけど、大きくて貫禄がある。
母から掃除を手伝って欲しいと頼まれて、寄り道もせずに高校から帰ってきた私は、倉庫から壷を持ってきてと頼まれた。
『女一人に壷なんて持ってこさせる?てか何で壷なんか…』
と、私は不満を漏らしつつも神社の裏にある倉庫へと向かった。
相変わらず散らかっている。
それが第一に思ったこと。
昔からごちゃごちゃしていたけど、より一層散らかりに磨きがかかっていた。
『もう…これじゃ壷がどこにあるか分からないよ』
母に言われた壷の特徴は、黒くて、口が茶色くて、まぁありがちな壷。
最悪なことに倉庫には電気がなくて、懐中電灯を持って進むしかない。
それだけの光を頼りに、黒色の壷なんて見つかるのか?と私は溜め息を漏らした。