大江戸恋愛記
それから私は、ここに来るまでのいきさつを話した。
倉庫にいて、いきなり何処かに落ちていったこと。気付いたらあの森の中にいたこと。
「…私は、平成23年の東京というところにいたんです」
「……」
「…っ信じてもらえないかもしれないけど、全部本当で…っ」
やっぱり馬鹿にされただろうか。そう思うと不安になって私は顔を上げた。
すると、ふわりと頭の上に手が置かれた。
「そんな顔をするな。……わしは紫苑の言うことを全て本当だと思っておるぞ」
「…でもっ、こんな不思議なこと信じれな…」
「いや、そうでもないのだ、紫苑」
「………へ?」
私は梅ばぁちゃんを見た。
すると懐から一冊の本を取り出した。
……昔の字って難しい。全く読めない。
「…それは?」
私はその本が何なのか気になって問いかけた。
「これに、ミライのことが書いてあるのじゃ」
「…はあ」
へー…未来のことが。
「…えぇ!?」
「ミライというのは何世代も後のこと、とこの書物には書かれておる。まさかと思って、おぬしに尋ねてみたら…そのまさかじゃ」
カッカッカと笑う梅ばぁちゃんに私は拍子抜けしてしまった。
未来のことを少しでも知っているなんて…
「さすがにミライの国や、食べ物、風潮などは書かれておらんがな」
それ書いてあったらその書物は恐ろしいよ…
「ただ、昔にもミライからの来訪者が来ていたみたいじゃ」
「え、嘘でしょ!?」
「この書物に書かれているんだから間違いない」
どれだけこの書物推しなんだろう、梅ばぁちゃん。