大江戸恋愛記
「ミライからの来訪者あり。その者は奇抜な身なり、言動をしていた、と書かれておるな」
「……」
「ミライがあるとは知っていた。…だが、ミライの者が今この場におるということは本当に不思議なことだ」
「……梅ばぁちゃんは、私が未来から来たって本当に信じられるの?」
黙って梅ばぁちゃんの話を聞いていたけど、やっぱりこのことが気になって私は尋ねた。
「…本来ならば信じがたい出来事だ。だが、わしはおぬしがミライの者だと思っておる」
「…それはどうして?」
きっぱりと言い切ったことに驚いたけど、私は理由を聞かずにはいられなかった。
「…おぬしの目が」
「私の…目?」
「おぬしの目が、嘘をついているように見えないのだ。ただそれだけのことじゃ」
私はそれを聞いて、思わず目頭が熱くなってしまった。
見ず知らずの私を、こうやって家に入れてくれたり、話を聞いてくれたり、そして……信じてくれた。
「梅ばぁちゃん……」
「ん?」
「……ありがとう」
自然と涙が流れてきて、私はそれを見られたくなくて俯いた。
ありがとう。本当にありがとう、梅ばぁちゃん。
ガン、ガンッ、ドシィィィィン!
「っ!な、何…!?」
突如大きな音がしたと思ったら、外に繋がる扉がすごい勢いで倒れてきた。すると同時に辺りにもくもくと煙がたつ。
強い風のおかげで庵の火も消えてしまった。