大江戸恋愛記
ポカーンとしている目の前の馬鹿男を思い切り睨んで、続いて言葉を紡いだ。
「大体ねぇ、扉壊すって何なのよ!普通に入ってこれないの!?梅ばぁちゃんが困るでしょ!分かる?アンタ常識ないんなら人に偉そうな口きく権利ないって言ってんの!甘ったれんなよ馬鹿男!!」
「…し、紫苑…」
「はぁ、はぁ……」
一気に言ったもんだから、かなり疲れた。
荒げた息を整えるために私は肩を上下に動かした。
「だ、大丈夫か?紫苑」
「梅ばぁちゃん…」
心配そうに私の肩を抱く梅ばぁちゃんを見て、あぁやってしまったと思った。
でも悔いはない。言いたいことは言ってやった。
見ず知らずだけど、それでもあんな言い方はひどいと思ったし、傷ついた。
私はゆっくり顔を上げて相手を見ようとしたけど、盛大に舌打ちをした後家から出て行ってしまった。
「あ…」
私は入り口に向かって外を覗いたけど、アイツの姿はもうなかった。
「…紫苑、ちょっと中へおいで」
「でも、扉が……」
「ああ、どのみち結界が張ってあるから何も入ってはこれるまい」
でも外から丸見えだよ多分……
そうツッコミたかったけど私は言われた通りに梅ばぁちゃんが座る近くに腰を下ろした。
「少し、昔話をするぞ」
そう言って梅ばぁちゃんは、スッと目を細めて話を始めた。