大江戸恋愛記
「凛を…凛を、許してやってほしい」
「え…?」
私は梅ばぁちゃんの言っていることがよく分からなかった。
「凛は、人間ではないということは分かっておるだろ?」
「あ、それは…まぁ。耳や尻尾があったから」
私は同意するようにこくりと頷いた。
じゃあ、アイツは一体何なんだろう?怪物にしては人間らしすぎるし、人間だと言われても違う。
「アイツはな…」
「……」
「人間の血が半分混じっている、妖怪なんじゃ」
「よう…かい?」
「ああ」
アイツが妖怪?いやでも人間の血が混じっているって……
「妖怪は妖怪の子。人間は人間の子だと区別されているが、凛は異例なんじゃ」
私は黙って梅ばぁちゃんの言葉を聞いた。
「アイツの父上は人間で、母上はそれはもう、綺麗な狐の妖怪だったんじゃ。妖怪と言っても良い妖怪でのう。人を襲ったりなど決してしない、人間らしい妖怪だった」
「………」
「やがて二人は恋に落ち、一人の子が生まれた。…それが凛じゃ。凛はよい子に育ち、両親の愛情たっぷりに育っていった。……だが」
突然、梅ばぁちゃんの表情が歪められ、私は何かあったんだろうと思い、小さく問いかけた。
「……何が、あったんですか?」
「……凛の母上が、村の人間達に殺されたのだ」
「っ、そんな……!」
「ひどい話だろう。母上が死ぬ前から凛は村の人間達にいじめられていたんじゃ。母上は危害を加えたりしないが妖怪、凛は人間と妖怪の子だからな。明らかに人間達から歓迎されていなかったんじゃ」