大江戸恋愛記
正直、怖い。
夕方と言えど、倉庫の暗さと言ったらありゃしない。
古い建物のせいか、歩く度にキィキィと軋む音が余計怖い。
『もうやだ…とっとと見つけて早く戻ろう』
私は唇を結びながら懐中電灯をさまよわせた。
でも目に入るのは壷じゃなくて、変なガラクタばかり。
もう壷なんて無いんじゃないの?
そう、思って諦め半分で懐中電灯を適当なところに当てたら……
『…あ!』
あった!壷!
私は一目散に駆け出して壷を見た。
色は黒。口のところも茶色い。うん、コレだ!
『よかったー…早く持って行こう』
持つにはそこまで大きくないし、これなら大丈夫だろうと壷に手をかけようとした時。
『え……?』
突如、強い向かい風が吹いた。