大江戸恋愛記
奥に進むにつれて、何か…さわさわと葉が揺れる音が微妙にだけど聞こえてきた。
何だ、やっぱり窓?
窓が開いているから外の音が聞こえているのだと、その時の私は思っていた。
でも、一向に光が見えない。
ずっと闇、闇、闇。ただ私の懐中電灯の光があるだけ。周りに物もガラクタもない。
私は何か気味が悪くなってきて、無理に笑顔を作った。
『…っあと少し歩いたら、もう戻ろう』
そう呟いて、僅かに早足になって進んだ瞬間、
『っ!え……!?』
何かにつまづいて身体が前に揺れた。その瞬間、体に異変を感じた。
あれ、私落ちてる。
落ちてる?
『っ……』
声が出ない。
やだ。嫌だ。怖い。暗い。死ぬ。
目の前が真っ暗で、身体が動かずにただ落ちていく私。
何処に?そんなものこっちが知りたい。
ああ、私死ぬんだ。これまで清く正しく生きてきたのに……
何故か冷静な私の脳内でそんなことを考えながら、目の前に光が見えた瞬間私は目を閉じた。