大江戸恋愛記
え、私さっきまで倉庫にいたよね……?
キョロキョロと辺りを見回したけど、倉庫らしきものは何処にもなかった。
ていうか本当に…
『ここはどこですか…?』
質問に返ってきたのはただ葉の揺れる音だけだった。
私は僅かに震える足で無理矢理立ち上がり、後ろを向いた。
『うわ…すごく大きな木…』
私がもたれかかっていた木はすごく大きくて、周りの木より明らかに飛び出しているのが分かる。
私は木の表面に手を這わせた。
どうしてだか知らないけど、心が安らいでいくのが分かる。
どこか、懐かしい感じもする。
『……ここは、どこなんだろう』
その言葉を何度も呟くけど、本当に私は戸惑っていた。
見渡す限り、森。そう森なのだ。
私の家の周りにある森ではないことは分かった。
家の周りの森はこんなに綺麗で、澄んでいないもの。
急に心細くなってきて、涙が出そうになるのを堪えしゃがみ込む。
せめて人がいればいいんだけど…人気がない。