大江戸恋愛記
『………よし』
うじうじしてたって仕方がない。行動しないと始まらないんだから。
私は頬を軽く叩くと立ち上がって大木に背を向けた。
その時、
『…おい女』
『ひゃっ』
いきなり頭上から声が降り注いできて、私は体を跳ねさせた。
だ、誰…?
私は声のした方へ顔を上げるが、そこには誰もいない。
『何処を向いてやがる』
『うわっ!』
今度はそっちかよ!と半ば自棄になって正面を向くと、
『わ……』
まるで絵に描いたような美形さんが、そこにいました。
深い青のさらさらの髪に、赤い瞳。背が高くて……あ、あれ?
『テメェ、誰だ』
『あ、あの……』
『何でここにいる』
うわ…美形さんが目の前で睨んでる…。
絵になるぜ…なんて素っ頓狂なことを考えていたけど、すぐに私は後ずさった。
『み……』
『質問に答えろ』
『み、み…』
『おい』
『耳、が……』
そして冒頭に至る。
長いことごめんなさい。