短編小説集*イベント編*
病んでしまっている私にはあまり興味が湧かない言葉。
「記念日はダメでもさ!
バレンタインデーに仲直りできるかもよ?」
「どーゆーことよ?」
「チョコだよチョコ!!
作って日屶くんに渡すの!」
佳奈の作戦はとても安易でシンプルなものだった。
手作りのチョコを作って謝って仲直りをするというもの。
確かに無難な考えだと思い、私はさっそく佳奈と一緒に材料を買いに行った。
バレンタイン当日。
玄関で日屶を待つ私。
あえて連絡もせず、驚かそうとホームルームがおわるとすぐにかけていった。
少しすると帰宅するたくさんの生徒が私の横を過ぎていった。
必死に探したけど日屶の姿はない。
佳奈も私を見つけて「ファイト!」と声をかけて帰った。
だけどいつまで待っても日屶は出てこない。
もう夕日が沈みそうになっている。
「見失ったのかな…」
「さぁな?誰待ちなんだよ?」
背後から声がする。
振り替えるとガラス戸を挟んで背中合わせに日屶がいる。
「日屶!?いつから…」
「けっこー前かな?」
さらりという日屶。
私は何も言えなくてうつむいて黙り込む。
「つーかさ。待ってる奴来ないなら帰ろーぜ?
暗くなったら危ないし…」