水曜日の彼女

 デートの誘いは唐突だった。


 「ねえ、観たい映画あるんだけど付き合ってよ。」

 「ホントは一緒にご飯食べた後に行きたかったんだよ。だけど夕方にヒデのバイト入ってたでしょ。しかもその日ずっと考え事してて人の話全然聞いてなかったし。それで言うの止めたんだ。」

 「ねぇ、いつ行く?」

 チカは一人で話を進め始めて半ば強引に誘ってきた。


 「…悪いけど、他の奴を当たってくれないか?」


 「えっ?どうして?」

 俺の返事に驚いて真顔になった。


 「最近、忙しいんだよ。バイトも前より入って空いている日ないし。」

 いい断り方が分からない。下手な言い訳だ。


 「空いてないって、毎日バイトに行ってる訳じゃないでしょ?」

 チカが食い下がってくる。怒ってるのか声のトーンが低い。


 「それに、女とツルむの止めたんだよ。だから俺、行かない。」

 「ごめん、じゃあ。」

 何言っても無理だと思って俺は決めた事を伝えてその場を後にした。


 「ちょっと、ヒデ!?」

 チカが何か言おうとしたが俺は無視して逃げた。


 傷つけてしまったがこれでいいんだ。

 もう中途半端な事はしない。

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