水曜日の彼女

 「本当に付き合ってないですよ。」

 俺は落ち着きを取り戻して答えた。


 「確かに、チカとは本当に仲いいですよ。だけど彼女とかじゃ無いです。」


 望さんは黙って聞いている。


 「それに…」

 俺は言いかけた言葉を飲み込んだ。


 心臓がバックン、バックンいい始める。


 ここで俺の気持ちを伝えるべきか。


 望さんは黙ったままだ。


 この車内の空気がより俺を緊張させる。


 「…それに、彼女がいるならメルアド教えてくれって言わないっすよ。」

 ヘタレな今の俺にはこれが精一杯の言葉だった。


 「アハハ。」

 ずっと黙っていた望さんが笑った。


 「それもそうだよねぇ。」


 車内の張り詰めた空気が望さんの笑い声で一掃された。


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