妄想乙女の恋事情
【夢の中】
『俺、お前のこと…』
――ピピピピ…。
そう、こんなの夢の話。
趣味、妄想。
特技、妄想。
少女漫画に洗脳されたアタシ、安藤唯(あんどうゆい)。
「はーあ…」
彼氏いない歴もちろん14年。
告白はしたことなしっ。…もちろんされたことも。
「唯~もう8時だけど遅刻するわよ~?」
お母さんののんきな声。
「もっとはやく起こしてよおおおおお~!!!」
アタシは慌てて準備し、家を出た。

「ひゃ~遅刻~!」
とりあえずアタシは何も考えずに走る。
すると、いつもは見ることのないバスとすれ違う。
(あ~やっぱり時間やばいんだなあ…。アタシもバス通したあい…)
ここから妄想が始まる。
バスに乗り遅れそうになっているアタシをバス停から「はやくっ!」って、王子様が待っているの。
そしてアタシは「ありがとう」って言って…。
それから王子様はアタシのことを「可愛い…」
――ゴンッ!
完全妄想中のアタシは周りが見えずに誰かとぶつかってしまった。
それは同じ学校の男子で…。
「ご…ごめんなさいっ」
こ…これはありがちなパターン!
ここでアタシ達は一目惚れに…
「ニヤニヤしてんじゃねぇよ、キモい」
そう言って走っていった。
アタシは何も言えずそこに立ち止まった。
――な…なんなのアイツ!ガチムカつく!
確かにぶつかったアタシも悪いけどさ、あんな言い方なくない?!
本当最低!朝からさげぽよ!
…つーか。
「遅刻ぅぅぅぅ!」
このときのアタシは人生で1番走ったかもしれない…。

「おはようございま~す…」
扉をそっと開けてアタシは先生に挨拶。
「おはよう、安藤。また寝坊か?」
「はい…」
いつも夢を見るアタシは起きれなくて(起きたくなくて)よく遅刻する。
「これ以上遅刻したら進級させないぞ?」
「それだけはっ!!」
「とりあえず席に着きなさい」
先生に言われ、アタシは席に着いた。


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