シュークリーム
「あそこにいる、村上隆哉(むらかみたかや)って人に言っちゃおっかな〜! 沙耶がいっつもすっごく熱い視線を向けてるよ、って」


心底楽しげに囁いた久美が、体を強張らせた私の耳元で続ける。


「それにこの間、村上君から飲みに誘われたからって泣き付いて来た沙耶の仕事、誰が代わってあげたんだっけ?」


優しい口調で私を脅す久美を前に、返す言葉を見付けられなくて──。


「わ、わかったわよ……」


押し返されたファイルを渋々受け取って、笑顔で会議室に向かった彼女の背中を恨めしげに見ていた。

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