手と手
再会
逃げ出した昨日
「お前、進路どうするんだ?」
高二の冬
進学校で有名な私の学校はもう進路の話ばかりだ。
隣の席の信治に聞かれるのはこれで何度目だろうか。
聞かれる度に同じ返答をする。
「留年かな。ははは・・・」
冗談で言ってるように聞こえるが、正直本当にやばい。
「授業始めるぞ〜」
4限目は数学。
私は嫌い。
インテグラルとかシグマとか、訳の解らない記号がでてくる。
ガタンッ
席を立って、教室を出ようと歩きだした私に、目もくれない教師。
空気が重い。
「千夏。」
保健室に着くやいなや、
まるで自分の家にいるように、くつろいでいる私の一つ年上の留年生、花上に呼ばれた。
「名前で呼ばないでくださいっていいませんでした?」
「また、ツンツンしちゃって、可愛くないねぇ南。」
そういいながら
私の腰まで伸びた髪に触れる。
「そんなに俺の兄貴が忘れらんないの?」
バシッ
髪をもつ手を振りはらって、無言でベッドに寝転んだ。
「奏・・・。」