【完】くすぐったがり彼女
「智」
その時俺の隣の席に真紀が座った。
キーンコーン……
次の講義を告げるチャイムが鳴り響く。
「授業は?」
「智に会えたから。たった今休講にした」
頬を赤らめて嬉しそうに笑う真紀を見たら、胸がキュウっと苦しくなった。
昨日あんなに冷たくしたのに…真紀って俺の事本当に好きなんだな。
「じゃあ、俺も休講にした」
頭を起こして、真紀にそう伝えた。
「もう…怒ってない?」
さっきまで笑っていた真紀が寂しそうに眉を下げて、俺に尋ねた。
「怒ってないよ…昨日はゴメン。俺が悪かった」
俺は真紀に頭を下げた。
「ううん。智は何も悪くないよ。笑うの我慢できなかった私が悪いだけだから……」
「違う!」
そう言って頭をあげた時だった。
俺の目に飛び込んできたのは、涙を流す真紀の悲しそうな顔だった。