【短編】5回目のキス
友達の菜摘からの電話に出た途端、『来た』って興奮して言われて、サッパリ意味不明。
《聞いてんの? 来たのよ!しかも2階の1番前♪》
「聞いてるけど……何が“来た”の?」
《はぁ?! 圭矢君のライブチケットに決まってんじゃんっ》
あぁっ!
圭矢は絶対にライブチケットくれないから、今回菜摘に頼んだんだ。
だって絶対来ちゃ駄目……って言うんだもん。
私の名前で取ってバレて怒られるのも恐い。
菜摘は、圭矢の写真を雑誌に送ろうって言い出した張本人。
菜摘のお陰で、芸能人になれた訳なんだけどね。
芸能界に入った途端、ファンクラブにまで入って応援してるし。
《今までで1番いい席なんだから♪
雫、圭矢君の事好きだったし神様からのプレゼントだよっ》
「そっそうかな?」
菜摘の中では、私は失恋した事になってる。
何回か、言おうとはしたんだけど……
『芸能人になった人を好きだっただけでも幸せよっ!』
なんて先に言われて未だ言えずなんだよね。