【短編】5回目のキス
「ちょっと待ってて! あれも買って来るねっ」
大勢の女の子の集団へと消えて行く菜摘。
私は、空いてるベンチに座り、それを眺めてた。
“圭矢最高だよねっ!”
“陸の方がいいよっ!”
なんて女の子達がキャーキャー興奮しながら通り過ぎる。
ライブ会場に来てから、ずっとこの光景を目にしてるな。
ライブは、4人グループだから人気も一気に上がる。
圭矢のファンだけじゃないもんね。
「やっと買えたよー。雫は何も買わないの?」
ポスターを大事そうに持つ菜摘に、笑って頷いた。
会場の中へ入り、暫くすると消える明かり。
どこからか、青や赤、緑の沢山の光が輪を描く。
大きな音に歓声が上がり、少し落ち着いた頃……叫び声や悲鳴の様な声が次々と聞こえた。
「あっ! 陸ー!」
隣で菜摘も周りと同じ事をしてる。
実は、陸ファンな菜摘。
目をキラキラ輝かさせ嬉しそう。
どこからか聞こえる“圭矢”って声援。
ステージに目線をやると、
すごく優しい顔をして歌ってたんだ。