【短編】5回目のキス
ダッシュした圭矢の家。
なのに……、
何だか機嫌悪い?
どうしていいかわからなくて、洗濯物を畳んでみたり。
「けっ圭矢、ご飯は食べた?」
「……食った」
「そっか……」
この重い空気は何なんだろ?
疲れてるのかな?
あっ!
私、来ちゃ駄目だった?
チラッと見た圭矢と目が合いドキッと音をたてた心臓。
「今日、歌詞3回も間違えた」
「えっ? 間違えたっけ……えぇ?」
うわっ!
ヤバッ!
私、何言ってんのよ?!
どうしよう……。
慌てて背けた顔をゆっくり圭矢に向けると、
笑ってない、無表情で私を見つめてた。
「あっ、いや……違うの。あの……ね」
何言ってんだろ。
これじゃあ、完璧行ってました!って言ってるも同じじゃない。
「何考えてんの?」
「……」
返す言葉が見つからず、視線を落とした。
「俺、来ないでって言ったよね?」
「えっ? 行ったの知ってたの?」
顔を上げた私が見たのは、芸能人の圭矢じゃない。
私も初めて見る……赤い顔をした圭矢だった。
「圭矢……?」
「あー! うるさいっ! 雫が悪いんだからね」