【短編】5回目のキス
さっきよりも、更に赤くなった顔に手を当てて俯いた。
「圭矢、どうしたの?」
顔に当てた手の隙間から、首を傾ける私を見つめ小さく溜息。
「俺ばっかりで嫌になる」
「え?」
「俺ばっかり雫を好きで嫌になるってんのっ!」
普段、そんな感情的な声を出さない圭矢から聞こえた言葉。
――好き。
圭矢が?
私を好きって言った?
口に手をあて、真っ直ぐに見つめてた目から知らぬ間に流れてた涙。
顔を伏せてた圭矢が私を見つめ直し、目を大きくさせながら近付いて来た。
「雫? 何で泣いてんの?」
「え? 泣いてなんか……あっ」
頬に手をあてると濡れてる。
慌てて拭う手を止められた。
「だって……初めて“好き”って言われたから。
本当はね? 不安で仕方なかった……」
私を見つめる目が優しくて、言わなくて良い事まで言ってしまう。
「いつか私なんて……いらなくなっちゃうんじゃないか、とか……」
「いらないなんて誰が言った?」
「だって……」
見上げた圭矢は、哀しい表情をしてた。