【短編】5回目のキス
「他に好きな奴いるんじゃないかって思ってた」
え?
他に好きな人?!
「始めの頃は、しつこい女だなーって思ってて。
でも、それが段々見えてきて違うってわかって。
気付いたら、すげぇ支えられてた」
「ほ……本当に?」
真っ赤になった圭矢が頷いて、また涙が溢れちゃったよ。
不安だったのは……私だけじゃなかったんだ。
圭矢も不安で居てくれたんだ。
涙を拭う手を不意に掴んだ。
自然と絡まる視線。
自分でした事なのに焦っちゃって……慌てて顔を下に向け様とした時、
初めてのキス。
突然過ぎて、目も開けたままで。
顔を傾けた圭矢の唇が、離れて私を見てるのにも止まったままで。
そして一気に熱くなる顔。瞬きを何回もしてしまう。
「目くらい閉じてよ」
頭をクシャクシャって撫でられ、笑った圭矢が立ち上がろうとした手を掴んだ。
驚いて振り返る圭矢に、
「次は……閉じる」
なんて大胆発言。
私の一言に顔を赤くしながらも、
「それって、もう一回して良いって事?」
なんて聞かないで欲しい。