【短編】5回目のキス


「だって……雫、電話もして来ないし、メールも最低限の内容以外しないだろ?」



暫くの沈黙の後、突然圭矢が呟いた。



「え……? それは、圭矢、仕事だからね?」

「昔は、しつこい位に、連絡してきてたじゃん」



確かに……そうだけど。
それは、私の方に振り向いて欲しいから必死でさ?

もし、圭矢が“芸能人”なんかじゃなかったら、まだしてたのかもしれない。


“芸能人”


それが、どうしても私の事を止めるの。

駄目だよって。
迷惑かかるって。



「俺が、どんなドラマとかCMとかしてても何も言わないでしょ?」

「しっ仕事だし……」



本当は、泣いてたよ?
辛くて哀しくて、嫌で嫌で仕方なかったんだよ?



でも、そんな事言っちゃ駄目じゃない。



言ったら止まらなくなっちゃうもん。
そして別れる事になる方が、もっと嫌だったんだもん。



「だから……俺以外に居るんだって……」





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