【短編】5回目のキス




「あ……このグロス?」

「え? あぁ、うん。圭矢から貰ったのだよ♪」



圭矢から貰った“プレゼント”
『貰ったからやる』
って貰った“プレゼント”


それでも気付いてくれたんだ。
そんな事を気付いてくれて嬉しい。



「やっぱ、雫にはこの色が正解だったよね」



なんて、にっこり笑って言う圭矢。

“正解”って?
これ……貰ったんだよね?



「え? これ余ったから貰ったんじゃないの?」

「え?! あ……」



赤くなった圭矢を見て、気付いた。


まさか……これって。
圭矢が選んでくれたの?

私に似合う色を選んでくれたの?

だからベージュじゃなくて……ピンクだったの?



「圭矢が選んで……」

「うるさいよ、雫」



真っ赤な圭矢の唇が、私の唇を塞いだ。


でも、さっきまでのキスとは違って、唇の隙間から入ってきた舌に驚いた。

こんなキス初めてで。
どうやったらいいかなんて知らなくて。

圭矢に合わせる事しか出来なかった。


漏れる吐息に、
自分の声に、

恥ずかしくなったのに中々離してくれなくて。



5回目のキスは大人になった気がしたんだ。





「圭矢って……キス魔だったんだね」

また抱きしめられてる時に言ったら『今まで我慢してたからいいのっ』って恥ずかしそうに答えてくれた。


我慢なんてしなくていいのにね。






-END-



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